ティッシュの空き箱回収量は毎月1,000枚超えに!クレシア×草加市のリサイクル回収の道のり
使い終わったティッシュの空き箱を、皆さんはどうしていますか?
多くの家庭では、そのまま「燃えるごみ」として捨てているかもしれません。でも実は、この空き箱はリサイクルできる資源だということをご存知でしょうか。
紙資源として使えるにもかかわらず、その多くが焼却されている。
そんな現状を変えようと、日本製紙クレシア(以下、クレシア)は2024年4月から、埼玉県草加市と協力してティッシュの空き箱の回収をスタートさせました。回収された空き箱は資源として再利用され、新たな紙製品へと生まれ変わっています。
この取り組みはどんな想いから生まれ、実現までにはどのような苦労があったのか。草加市廃棄物資源課の関口さんと、クレシアPSI部の中島さんに伺いました。
目次
※所属は取材当時のものとなります
クレシア×草加市で推し進めるリサイクルの現在地
2024年4月にスタートしたティッシュの空き箱回収の実証実験。2025年4月から本格運用を始め、現在は市内5か所の公共施設に回収ボックスを設置し、市民が持ち込んだ空き箱を回収しています。
開始から1年以上が経過した今、その成果について伺いました。
ティッシュの空き箱回収量は毎月1,000枚超えに
――まず、現在どのくらいのティッシュの空き箱が回収されているのか教えてください。
中島:現在は毎月1,000〜1,500枚ほど回収できています。スタート当初に比べると、回収量は1.5〜1.7倍程度に増えていますね。
実証実験中の回収については、日本製紙グループの古紙リサイクル会社が月に1度、市内5か所の回収拠点を巡回しています。回収した空き箱は、草加市にあるクレシアの東京工場で発生する損紙(製造工程で発生する再利用可能な紙)などと一緒に草加市内の日本製紙グループの板紙工場に運ばれ、ダンボールの中芯などの原料として再利用されています。ティッシュの空き箱が、姿を変えて別の紙製品へと生まれ変わる。まさに紙の循環が実現できていると感じています。
――関口さんは現場の実感としてどう感じていますか?

関口:正直に言うと、最初はそんなに集まらないんじゃないかと思っていました。
ところが開始からわずか1か月ほどで、「回収ボックスがいっぱいになりました」という連絡が来たんです。
これには驚きましたね。
回収ボックスは上下2段になっていて、上段がティッシュの空き箱、下段が牛乳パック用なのですが、その上段が想定より早く満杯になったんです。市民の皆さんの関心の高さを、肌で実感した瞬間でした。
――空き箱はどのような形で持ち込まれることが多いのでしょうか。
関口:きれいにたたんで持って来てくださる方が多いですね。スーパーの袋などに何十枚もまとめて入れて持参される方もいます。感覚的には3割くらいの方が、家である程度ためてから持って来られている印象です。わざわざ自宅で保管して、回収拠点まで足を運んでくださる。これは本当にありがたいことです。
ティッシュの空き箱は今までは「捨てるもの」だった。それが「資源になるもの」と認識され始めている。回収量が増えている背景には、そうした意識の変化もあると思います。
なぜ草加市から?リサイクルステーション設置の背景と「紙の循環」への想い
ティッシュの空き箱回収が始まった背景には、「リサイクルできる紙が捨てられている」という課題がありました。
ティッシュの空き箱の61.9%が燃えるごみに
――そもそも、なぜティッシュの空き箱の回収を始めようと思われたのですか?

中島:ティッシュの空き箱は基本的に「雑がみ」という分類になるのですが、本来であれば古紙として回収できるはずなんです。ところが調査をしてみると、61.9%が燃えるごみとして処分されていることが分かりました。
ダンボールや新聞紙は分別するのが当たり前になっていますよね。でもティッシュの箱は紙なのに、そのまま燃えるごみにしてしまう方が多かった。それがすごくもったいないと感じました。製紙会社としても、これは見過ごせない課題でした。
——なぜリサイクルが進まないのでしょうか。
中島:理由はいくつかあります。
まず、ティッシュの空き箱がリサイクルできることを知らない方が多い。それから、雑がみとして出せることが浸透していない。回収場所が分からないというケースもあります。
みなさんリサイクルへの意識がないわけではないんです。ただ、行動に移しやすい仕組みがなかった。だからこそ、啓発だけではなく、回収できる場所そのものを作る必要があると考えました。
20年以上続く牛乳パック回収が築いた信頼関係
——実証実験が草加市とクレシアで始まった理由は何だったのでしょうか。

中島:実は草加市さんとは20年以上のお付き合いがあるんです。
始まりは2005年の牛乳パック回収でした。草加市内の小中学校で回収された給食の牛乳パックをクレシアが再資源化し、そのお礼としてトイレットロールを学校へお届けするという取り組みを続けてきました。
製紙業として考えると、燃やされてしまう紙が多いのであれば、回収して紙の価値を伝えていくべきだという思いがありました。紙は燃やしてもCO₂排出量はカーボンニュートラルとされていますが、リサイクルに回せばその分プラスの効果が生まれます。
それは草加市さんの焼却費の削減にもつながる。そのあたり全体を考えて、ティッシュの空き箱回収とリサイクルの実験をスタートしました。
関口:草加市としては、リサイクルできるものは積極的にリサイクルしていただける環境を作っていきたいという思いがあります。
実は草加市は、近隣の4つの市と1つの町(越谷市、八潮市、三郷市、吉川市、松伏町)と共同で組織を作り、2つのごみ焼却工場を運営しています。 つまり、可燃ごみを減らすというテーマは、草加市単体だけの問題ではなく、5市1町が足並みをそろえて取り組むべき巨大な共通課題なんです。
焼却炉に持ち込まれるごみを少しでも減らすことは、究極の目的であり、自治体としての大きな責任です。 だからこそ、単に「ごみを燃やす費用を抑えたい」という経済的な理由だけでなく、限られた資源を未来へつなぐ地域社会をどう作るか、国が提唱する「循環型社会の形成」にどう寄与できるかという視点を常に持っています。
2025年に草加市が「SDGs未来都市」に認定されたことも、こうした地道な可燃ごみ削減とリサイクルへの強い意識が背景にありますね。
――この20年の積み重ねは、地域にどんな影響を与えていますか?
関口:子どもたちは学校で小学校1年生の時から、給食で出てくる牛乳パックを自分たちで洗って、開いて、回収することを習慣化しています。その経験が家庭へも広がるんです。
「今日も牛乳パックを洗ったよ」そんな会話が家庭で生まれる。保護者の方も自然とリサイクルを意識するようになります。20年以上続けてきたことで、地域全体のリサイクル文化につながってきたのではないかと思います。
——草加市は以前からリサイクルに力を入れていたのでしょうか。
関口:そうですね。牛乳パックだけでなく、
- 古着
- 小型家電
- 廃食油
など、さまざまな資源回収を行っています。
資源として活用できるものはできるだけリサイクルしたい。それが自治体としての責任だと思っています。
クレシアが目指す「紙リサイクルは当たり前」の未来
ティッシュの空き箱の回収は順調に進んでいるように見えますが、実際にはスタートまでに多くの課題がありました。
実証実験の手応えと改善点とは?
——現在は順調に見える取り組みですが、実現までにはさまざまな苦労もあったそうですね。

中島:そうですね。実は、アイデアが出てからすぐに始められたわけではありません。
ティッシュの空き箱を回収するとなると、
- どれくらい集まるのか
- 異物が混入しないか
- 誰が回収するのか
- どのようなルートで運搬するのか
といった課題を一つひとつ確認する必要がありました。
社内や回収業者さんからは、「本当に量が集まるのか」「生ごみなどが混ざってしまわないか」という心配の声がありました。回収の仕組みをつくる以上は、きちんと運用できることを証明しなければいけませんでした。
——どのように課題を解決していったのでしょうか。
中島:ティッシュの空き箱も牛乳パックと同じ回収方法でいけるだろうという見立てがありましたが、最初の段階では、それを実現する仕組みが日本製紙グループ内にはなかったんです。回収する人もいないし、車もない。
そこで、ちょうど1年ほど前に当社で発足していた「フィールドサポート部」という、店舗を回って商品調査をする部署に協力を仰ぎました。フィールドサポート部のメンバーが草加市の5か所の拠点を月1回巡回し、回収と同時に、枚数のカウントや、安全性を証明するための写真撮影を地道に続けて実態を示してくれた。これが大きな転機となりました。
集まったデータをもとに、草加市にあるクレシアの東京工場の既存ルートとドッキングさせることに漕ぎ着けました。工場から出る「損紙」は100%綺麗なものだと証明されていますから、そこに市民の皆さんが持ち込んでくださった空き箱を合流させる形です。
ゼロからの調査に始まり、社内や回収業者さんの理解を得て、現在の仕組みを実装するまでには約1年かかりました。でも、あの泥臭くデータを積み上げた期間があったからこそ、現在の安定した運用につながっていると確信しています。
——草加市側にも課題はありましたか。

関口:ありましたね。一番大きかったのは設置場所です。
市内の公共施設には、すでに牛乳パックや小型家電、古着などの回収拠点があります。そこへ新たにティッシュの空き箱の回収を追加するわけですから、スペースの確保が悩みでした。
ただ、単純に置けばいいというものではありません。
- 公共施設内で利用者の動線を妨げてはいけない
- 災害時の避難経路も確保しなければならない
- そのうえで、市民の皆さんの目に留まりやすい場所に設置したい
というなかなか難しい条件でした。
そこで、中島部長にご相談したところ、「2段にしましょう」と。回収ボックスを上下2段にすることで、床面積を増やさずに回収項目を増やすことができました。シンプルなアイデアですが、画期的でしたね。
——実証実験を通じて見えてきた成果はありますか。
関口:実証実験を始める前は、異物が混ざってしまうのではという心配もありました。
ただ実際にやってみると、そういった問題はほとんどなく、市民の皆さんがルールを守って持ち込んでくださっています。回収量も右肩上がりで増えていますし、5か所という限られた拠点数でこれだけ集まっているのは、草加市の皆さんのリサイクルへの意識の高さの現れではないでしょうか。
—— 一方で、今後の課題はありますか。
関口:やはり回収拠点の数ですね。現在は5か所ですが、もっと気軽に参加できる環境をつくるためには、回収場所を増やしていく必要があります。ただ、設置スペースの制約もありますので、そこは今後の検討課題です。
目指す先は紙のリサイクルステーションの全国展開!
——この取り組みは、今後どのように発展していくのでしょうか。
中島:草加市さんとの取り組みを通じて、
- 回収する
- 集める
- 再資源化する
- そして、新しい製品として活用する
という一連の流れを、一つのモデルとして構築することができました。今後は、このモデルを他の地域にも展開していきたいと考えています。
——すでに新しい取り組みも始まっているそうですね。

関口:2025年に草加市がSDGs未来都市に認定されたことをきっかけに、回収したティッシュの空き箱を原料とした「雑紙保管袋」を制作しました。市内の小中学校の全児童・生徒に配布しました。
子どもたちは、回収して、リサイクルして、新しい商品になる、という流れを実際に目で見ることができます。子どもたちがその袋にティッシュの空き箱を入れて持ってくる——リサイクルの輪が、また一つ広がりました。
——今後、回収対象を広げる構想もあるのでしょうか。

中島:あります。例えばトイレットロールの芯やラップの芯なども紙製品です。こうしたものも将来的には回収・リサイクル対象にできる可能性があります。
クレシアには全国に工場があります。それぞれの地域で自治体や企業と連携できれば、草加市で培ったモデルを横展開できるかもしれません。
もちろん簡単なことではありません。回収ルートの構築や既存事業者さんとの調整など、多くの課題があります。それでも、紙資源を循環させる仕組みは社会にとって必要です。
地域と密着した社会活動を行うことで、当社や製品を知ってもらうとともに、製品が身近な場所で作られているということを知ってもらうことも大切にしたいです。
——最後に、リサイクルについての今後の展望をお聞かせください。

関口:草加市としては、資源として活用できるものはできるだけ循環させたいと考えています。
可燃ごみを減らし、資源を有効活用することは、次の世代へ豊かな環境を残すことにもつながります。そのためにも、市民の皆さんと一緒に取り組みを続けていきたいですね。
中島:実際に草加市さんで回収を始めてみて、もう一つの現実にも直面しました。回収された空き箱のなかで、当社の製品の割合は全体の半分もなかったんです。残りの多くは他社さんの製品で、正直悔しさもありました。
でも、そこで「自社品だけを回収しよう」とするのは企業の独りよがりです。社会全体で紙資源を循環させるという大きな目的の前では、メーカーの垣根は関係ありません。
「どこの製品であっても、資源として次のステージにつなげていく」。それが製紙会社としての責任であり、本当の意味での循環型社会への貢献だと考えています。
ティッシュの空き箱がリサイクルできるということを、もっと多くの方に知っていただき、草加市で生まれたこの挑戦が、循環型社会の実現につながる一歩になればと思っています。
目指すのは、「紙リサイクルが当たり前」の社会。
使い終わった紙を捨てるのではなく、次の資源へとつなぐ。
市民・自治体・企業が協力しながら資源を循環させる。
草加市で始まったこの取り組みは、その未来に向けた一歩となっています。
※本記事は2026年5月の取材に基づいています