育休は、暮らしを知ること。クレシア従業員が語る、男性育休のもうひとつの意味
日用品や衛生用品は、使う人の「暮らしのリアル」に根ざしてこそ、本当に価値あるものが生まれます。クレシアは、そう信じて商品づくりを続けてきました。
そして今、その商品をつくる従業員自身が「暮らし」を深く知る経験として、男性育休にも向き合っています。
男性育休は、単なる制度利用ではありません。それは従業員が、生活者として、家族の一員として、「使う人の側」に立つ視点を深める大切な経験でもあります。そして、その経験を持ち帰った人財が組織にいることが、クレシアの商品と組織そのものに少しずつ変化をもたらしています。
今回は、本社商品開発部と開成工場という2つの異なる職場から、実際に男性育休を取得した従業員とその上司が集まり、取得前の不安、職場の支え合い、そして仕事への変化について本音で語り合いました。
目次
育休取得者(2019年入社)
育休取得者(2022年入社)
取得前の不安と、現場の受け止め方
「キャリアが止まるのではないか」「周囲に負担をかけしまうのではないか」「部下に相談された時、どう対応していいかわからない」――。男性育休には、取得する本人にも、その上司にも、少なからず不安があります。特に、メーカーでは、生産や出荷を支える業務や専門性の高い商品開発など、簡単に代替しにくい仕事も少なくありません。
しかし、一歩踏み出した先に待っていたのは、想像以上に温かい上司の言葉。そして、誰かが抜けるからこそ見えてきた「組織のしなやかさ」と「新たな支え合い」の形でした。
不安を越えた先にあった、お互いの気づき
——育休を取ろうと決めた時、最初に頭をよぎったことは何でしたか?

三田: 「今は男性も育休を取る時代」という感覚は、最初からありました。妻の妊娠がわかって3〜4カ月のころ、妻からも当たり前のように「取るよね?」と静かな圧がかかり(笑) 。
ただ、現実的な不安はありました。私は工場で事務職をしながら、フォークリフトの業務にも携わっていたので、「自分が抜けたら業務に影響が出るかもしれない」と思うと、なかなか言い出せなくて。
でも、意を決して上司に妻の妊娠を伝えた時、返ってきた第一声は「育休の日程が決まったら教えて」でした。上司の側から切り出してくれたその一言で、肩の荷が一気に下りたのを覚えています。
それから実際に、産後に1カ月弱、そこから2カ月ほどおいて2回目の休暇を3カ月ほど取得しました。

林: 私の場合も、出産が近づくにつれ、妻から「当然、取るよね?」という話が出て(笑)。
当時は任される仕事や責任も増えて、精力的に働いている時期でした。だからこそ、キャリアが停滞してしまうのではないかという戸惑いも正直ありました。
それでも、生まれてくる子どもと過ごせる時間は一生に一度。妻と一緒にその時間を見守りたいという気持ちの方が強く、育休を取得することに決めました。
第一子でしたので、産前は仕事に集中し、産後にまとめて約1カ月取得しました。
——上司の方からそっと背中を押してもらえるのは、素敵な関係性ですね。ちなみに上司のお二人は「育休を取りたい」と相談を受けた際、率直にどう受け止められましたか?

甲斐: 私の場合、部下から育休の相談を受けたのは林さんが初めてでした。「林さんがパパになるのか」と感慨深くなると同時に、「どれくらい休暇を取るのかな?」と思った気がします(笑)。
制度があることはもちろん知っていましたが、いざ実際に申告を受けてみて初めて、具体的な内容を十分に理解できていなかったことにも気づきました。「知らないから不安」だったのは、実は上司の側も同じだったんです(笑)。なので、林さんと一緒に人事部に説明を受け、法律や制度について確認しました。部下を持つ立場として、改めて育休を考えるきっかけにもなりましたね。

小林: 私は当時、まだ三田さんの上司ではなかったのですが、開成工場では彼が2例目で、すでに前例があったことがスムーズな対応につながりました。
フォークリフト業務については、ちょうど採用を進めようとしていたタイミングだったので、フォークリフトの免許取得を採用条件に加えることで対応しました。この経験から、今後も複数の育休取得者が出ることを見据え、今は経理担当者にもフォークリフトの免許を取ってもらうなど、体制の見直しも進めています。三田さんの育休申請が、組織の体制を見直す機会になっているなと感じています。
暮らしに欠かせない商品をつくる人間が、暮らしを経験した
育児という未知の現場に飛び込み、24時間途切れることのない家事や育児に向き合う中で見えてくる、暮らしのリアル。このリアルな大変さを身をもって知ることは、生活者への共感力を高め、より安全で安心な商品づくりへの原動力となります。限られた時間の中で最大の成果を出すための「働き方の変革」にも繋がっています。
育児の現場で得た、生活者としての高い解像度
——育児休暇を取得して、仕事への見え方は変わりましたか?

林: 育休中は、家事と育児に追われて「休む」という感覚がほとんど持てませんでした。夜泣きもあり、誰かに相談する時間を捻出することさえ難しい。体力面はもちろんですが、それ以上にメンタルを維持する大変さを実感しました。
また、復職してから改めて見えてきたこともありました。以前、業務用のハンドタオルなどの開発に携わった際、当社は肌に触れる商品が主力であるにもかかわらず、「安全・安心」という価値を十分に打ち出し切れていなかったのではないか、と感じたことです。
私の子どもは肌が敏感なのですが、同じ悩みを抱える保護者は多いはずです。育児の現場を経験したことで、「いま本当に求められているものは何か」を、より具体的に捉えられるようになったと思います。

三田: 妻が帝王切開だったため、産後1カ月は絶対安静でした 。そのため、家事も育児もほぼ一人でやる期間があったのですが、子どもは夜中でも3〜4時間おきに目を覚まします。 改めて家事や育児を日々担うことの大変さを痛感しましたし、「会社で仕事している方がずっと楽なのかもしれない」とも思いました(笑)。暮らしの中にある「名もなき家事の大変さ」を、身をもって感じた大切な期間でしたね。
でもこの経験があったからこそ、育休前の不安に共感したり、育児の楽しさも大変さも共有できたり、いつか自分が上司の立場になった時には育休をとる従業員に寄り添いながら、気持ちよく送り出したいなという気持ちにもなりましたね。
——その経験は、今の仕事の仕方にも影響していますか?
林: 仕事の仕方はすごく変わりましたね。特に、時間が有限であることを強く感じるようになりました。今までは、自分が残業してがんばれば仕事は終わるというスタンスでしたが、今は子どもの送り迎えもありますし、限られた時間の中でより優先順位を意識して仕事に取り組むようになりました。
また、なにかあった際に業務を停滞させなくていいよう、これまで単独で進めることが多かった担当テーマを現在は2人体制で業務を推進し、進捗状況や意思決定プロセスを共有・可視化できるようにしています。
三田: 私も時間が有限であることを意識するようになりました。もともとオンとオフの切り替えがはっきりしている方でしたが、育児休暇を取得することでより家族を大切にしたいという思いが強くなって。勤務時間は集中して業務の密度を上げ、終わったら気持ちを切り替えて家族との時間に向き合う。そうしたメリハリが、家庭でも仕事でも充実感に繋がっていると感じます。
一人の育休が、組織を動かす
育休取得の広がりは、現場に「当たり前」の文化と新たな気づきをもたらしています。取得者が道をつくったことで、育休取得することの選択を躊躇していた現場でも前向きな流れが生まれ、「個に依存しない組織づくり」への変革が始まっています。
個のスキルに依存しない、しなやかなチームへ
——育休取得者が増えることで、組織に変化は現れていますか?

小林: 製造現場でも、若い男性従業員が後に続いて育休を取り始めています 。特にオペレーターなど現場に携わるメンバーは、最初は言い出しにくいと感じる人もいるかもしれませんが、三田さんたちが道をつくってくれたおかげで、非常に良い流れができています。

甲斐: 育休について人事に話を聞きに行ったとき、1カ月を超える育休を取得している男性従業員がまだ少なかったことに驚きました。私自身、林さんから相談を受けるまで意識していなかったのだから、当然とも言えるのですが(笑)。各部門で事例が増えていけば自ずと意識も高まっていきますし、クレシアの文化として、育休を取ることが当たり前になっていくことを期待しています。
また、先ほど林さんが話してくれた通り、商品開発部では、「特定の個人に依存しない組織づくり」を本格的に考え始めました。業務をチーム内で実践的に分担し、進捗を常に全員で共有していく仕組みへのチャレンジです。林さんの育休取得のきっかけがなければ、この課題に早急に取り組むチャンスがなかったかもしれません。
こうした取り組みは、育休に限らず、介護や療養などで一定期間メンバーが不在になる場合にも、チームで支え合いながら業務を進められる体制づくりにつながっていると感じます。
——クレシアの2024年度の男性育休の取得率は81.25%※、2025年度は100%※と、2024年度の全国の男性育休の平均値を超える結果になっています。林さんや三田さんが休暇を取ったことによって、組織にも少しずつ変化が現れているのですね。実体験を通じて、「男性育休を広めていくために必要なこと」は何だと思いますか?
※育児休業等と育児目的休暇の取得割合
三田: 会社としてより積極的に情報を届けることが重要だと思っています。男性育休が当たり前ではなかった世代の方々にも理解が深まるような説明会などがあれば、取る側も送り出す側も、よりフラットで気持ちよい関係を維持できるのではないかと思います。
林: 業務の引き継ぎに関しては、もっと早くからやればよかったというのが正直な反省です。私の場合、当時は抱えていた案件も多く、関係部署も多岐にわたっていたため、少しでも引き継ぎの不安を解消するための資料を作成していたのですが、時間がかかってしまって。
できれば1カ月前には引き継ぎを終え、あとは自分がフォローに回って「問題なく回るな」ということを見届けてから休む。そうすれば、休み中に仕事が気になることも減り、より安心して育児に専念できたなと思います。
育休は、「暮らしに寄り添う」を本気でやるということ
「周りに迷惑をかけるかも」という不安も早めに相談することで、組織をより強くしなやかにしていくきっかけになります。育休はキャリアの停滞ではなく、家事や育児という「暮らしの視点」を磨き、自身の可能性を広げる貴重な経験。そして、これらの経験が「クレシアらしさ」を形づくっていきます。
——最後に、これから育休を取る従業員へ、メッセージをお願いします。

甲斐: 「周りに気兼ねしてしまう」という気持ちはよくわかります。でも、希望はぜひ素直に上司へ伝えてほしいです。上司の側も、それを「より強い組織へ改善していくチャンス」と捉えれば、最善の方法を一緒に考えていけると思います。
小林: 周りへの気兼ねから「もう少しあとで相談しよう」と先延ばしにしてしまうこともあるかもしれませんが、仕事はチームで支えることができます。早めに教えてもらえれば、その分しっかり準備ができますし、安心して休んでもらえます。育休を取ろうと決めたら、いつでも気兼ねなく相談してほしいですね。
三田: クレシアのメンバーは、みんな協力的すぎるくらい協力的です(笑)。実はわが家では3人目の出産が控えており、近々また育休を取得する予定です。育休は、家族との時間を大切にするだけでなく、自分の可能性や視野を広げるきっかけにもなると思います。
林: キャリアの停滞を心配する方もいるかもしれませんが、私は育休を経験したことで、むしろキャリアがより豊かになると考えています。キャリアは、仕事だけで積み上げるものではありません。暮らしのリアルを知っているからこそ、より本質的な価値を持つ商品をつくることができると思います。
クレシアは、そうした「暮らしの視点」を持つ人を大切にし、育てていく会社です。だからこそ、自分が何を優先したいのか、素直に考えてみるのも良いのではないでしょうか。
【知っておきたい法改正】仕組みを知ることは、お互いを思いやる第一歩
座談会の中で三田さんが「取る側も送り出す側も、フラットに話し合えるように情報を届けることが大切」と語ってくれたように、制度という「仕組み」を正しく知ることは、チームの心理的安全性やしなやかさを生む大きな土台になります。
2025年以降の法改正では、企業から従業員への意向確認の義務化や、より柔軟な働き方を可能にする選択肢が広がっています。「法律だから守る」のではなく、誰もが心地よく働き、暮らしを大切にできる組織であるために。国がすすめる法改正のポイントをご紹介します。
| 育児・介護休業法 改正のポイント ※2025年4月1日時点 |
| 子の看護等休暇の見直し(義務) ・「子の看護休暇」の対象が「小学校就学前」から「小学校3年生修了まで」に拡大 ・取得事由に「学級閉鎖」や「入卒園式等」が追加 ・勤続6カ月未満の除外規定が廃止 |
| 所定外労働の制限の対象拡大(義務) ・所定外労働の制限(残業免除)の対象が「3歳未満」から「小学校就学前」に拡大 |
| 短時間勤務制度の代替措置にテレワーク追加 ・短時間勤務制度(3歳未満)の代替措置のメニューに「テレワーク」が追加 |
| 育児のためのテレワーク導入(努力義務) ・事業主は3歳未満の子を養育する労働者がテレワークを選択できるように措置を講ずることが努力義務化 |
| 育児休業取得状況の公表義務適用拡大(義務) ・育休取得状況の公表義務対象が「従業員数1,000人超」から「300人超の企業」に拡大 |
| 柔軟な働き方を実現するための措置(義務) ・事業主は、3歳から小学校就学前の子を養育する労働者に関して、以下5つの選択して講ずべき措置の中 から、2つ以上の措置を選択して講ずることが義務化 ============= <選択して講ずべき措置> ①始業時刻等の変更 ②テレワーク等(10日以上/月) ③保育施設の設置運営等 ④就業しつつ子を養育することを容易にするための休暇 (養育両立支援休暇)の付与(10日以上/年) ⑤短時間勤務制度 ============= ・3歳未満の子を養育する労働者に対して、子が3歳になるまでの適切な時期に、事業主は柔軟な働き方を実現するための措置で選択した制度に関する事項の周知と制度利用の意向の確認を行うことが義務化 |
| 仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮(義務) ・事業主は、労働者が本人または配偶者の妊娠・出産等を申し出た時と、労働者の子が3歳になるまでの適切な 時期に、子や各家庭の事情に応じた仕事と育児の両立に関する事項について、労働者の意向を個別に聴取する ・事業主は、上記で聴取した労働者の仕事と育児の両立に関する意向について、自社の状況に応じて配慮する ============= <具体的な配慮の例> ・勤務時間帯、勤務地にかかる配置 ・両立支援制度等の利用期間等の見直し ・業務量の調整 ・労働条件の見直し ============ |
暮らしに寄り添う「これからの働き方」を、みんなで一緒に
暮らしに欠かせない商品を届けるために、従業員自身が暮らしのリアルを知っていること。今回の座談会を通じて、男性育休にはそうした意味もあることが見えてきました。
毎日当たり前のように使っている商品も、一人の「親」や「生活者」の目線で見つめ直してみると、今まで気づかなかった視点が見えてきます。
そして、誰かが心地よく休めるようにみんなで支え合う経験は、チームを、もっと強くて優しい場所に変えてくれるはず。
特別なことではなく、誰もが当たり前に大切な時間を優先できる会社へ。クレシアはこれからも、新しい視点を持って戻ってくる仲間を温かく迎え、これからの働き方をみんなで一緒につくっていきます。
※所属は取材当時のものとなります。